なりっぱなし

黒く蠢く物

ゴキブリだ。目の前の壁にいるのはどう見てもそうだ。
夜中突然目を覚ましたら壁に蠢く物が見える。
どこからどう見てもあのアレだ。黒光りしたこの世で一番苦手なもののお出ましだ。
飼い猫がちょっかいを出そう出そうと興味深そうに見つめている。
早く討伐しなくては。彼が狩ってしまう前に。
彼はアレを半殺しにして母に献上した過去を持つ。
無論、母がパニック状態で奇声を上げて飛び起きたのは言うまでもない。
私は新聞紙を丸めたものを武器としてアレに対峙しようとした。

その時だった。

アレが私の顔を目がけて飛んできた。
私はパニック状態になった。
アレは殺されてなるものかと最後の手段に出たらしい。
私も顔に飛びつかれてなるものかと必死で逃げる。
新たに殺虫スプレーを装備した。
一刻も早くアレを倒し、新聞紙で包み私の視界からいなくなって欲しい…。
アレが視界に入ってから既に10分程経っていた。家具と壁の間に逃げ込まれたら終わりだ。
私は殺虫剤を構え、吹きつけた。
よし、少し弱まったか…
アレは床の上で力なくもがき始めた。
勝ったか…私はこの世で一番苦手なものに勝てたのか?

そう思った瞬間・・・

彼が飛びつき始めた。
完全にアレは彼の玩具とされている。
生かさず殺さずいたぶり続ける彼はさながら生まれ持った本能で確実に獲物を捉え続ける。
彼を叱りつけどかせようとしても繰り返しいたぶりに来る。
しまいにはアレの身体がバラけそうになる。

私は覚悟を決めた。
新聞紙の中にアレを包みこの戦いを終わらせようと。
用意した物に姿が見えないように包み込みゴミ箱に廃棄する。
勝った。この世で一番苦手なものとのとの戦いに勝った。
いたぶる玩具を取り上げられた彼はつまらなそうに炬燵で寝てしまった。
戦いに疲れた私も寝ることにした。
もう出てこないで欲しい。そう思いながら眠りについた。




もうホント勘弁して欲しいですよね。Gのつく虫。

私の次に繋ぐのは、ねじまき鳥よ、おれの幸運を願えのビッキー・ホリディさん。
『そう思いながら眠りについた』からお願いします!

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